貯信箱

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貯金箱ならチャリンと音がするのにな。
そんな事を考えならが貯信箱を振った。音はしない。
豚が貯金箱の定番とするなら、貯信箱は犬。らしい。
忠犬として飼い主を信じるからだろうか。陶器で出来たソレは
お座りの格好で何処か見覚えのある姿をしていた。
『築くは一生、失うは一瞬』と表現されるように
もしもの時の為に信用を貯めて置くことが出来たら良い。
少々値は張ったがそれこそ信用し買ったのだ。
それから毎日少しでもコツコツ真面目に貯め続けた。
物質を貯める訳ではない為重さに現れない。
そこは自分を納得させながら地道に貯め続けた。

そして遂にその日が来た。
私の信用が地に落ちた今、貯信箱を手にとる。
音はしない。
静かに目を閉じる。
そして勢いよく床に叩きつけた。

私は涙を流していた。
目を開ける。忠犬の欠片だけが散乱していた。
そうか…

やっぱり私は貯信箱を信用していなかった。
SF
公開:21/12/22 06:17

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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