猫

私のアパートのそばに猫の溜まり場がある。近所の誰かが餌でもやっているのだろう。学校帰りの子どもたちが一緒に遊んでいるのをよく見かける。抱き上げた猫にペロペロ舐められてきゃっきゃと喜んだり、ときには噛みつかれかけて悲鳴をあげたり。
微笑ましい？正直言って迷惑だ。集まった猫たちは、にゃあにゃあと耳障りな声で鳴く。ただでさえすぐそばの土手を走る列車がうるさいのに。

仕事を終えて帰ってくると今日も猫たちが集まっていた。
土手の斜面をウロウロしては、鳴いている。おいおい轢かれるぞ、と思っていたが、奇妙なことにいつもならひっきりなしに行き来する列車が来ない。
「そこの踏切で人身事故が」
下の階の老婆が教えてくれた。
「１時間も止まってるのよ」
「１時間？」
「飛び散ったものを拾うからね」
土手の猫たちは、一心不乱に何かを探している。

やがて満足げに降りてくると、私を見上げベロリと舌なめずりをした。