きこえる

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結婚の挨拶をしに彼女の実家に伺った。
緊張する僕の前、厳つい顔した彼女の父が手に細い棒を突き付ける。何だ?一体何が始まるんだ?
彼女の母がコホンと咳ばらいを一つ。「貴方はウチの娘のどこが好きなの?」
その質問と同時に彼女の父が棒を振り上げる。
な…何だ…喉の奥から言葉が溢れてくる!「全部です!笑顔が素敵なところ、料理は下手だけど一生懸命作ってくれるところ、怒りっぽいところも全部!」言葉が止まらない!
「恵はこの方のどこが好きなの?」
「全部よ!私の我が侭を聞いてくれるところ、抱擁力があるところ、少し頼りないところも全部!」彼女も止まらない!?
ええい!言うなら今だ!「僕は恵さんと結婚します!」
彼女の父が満足げに細い棒を下ろした。一体何だったんだ?
「父さん、指揮者なの。それも本音を引き出す事に特化したね」
彼女の父が僕に握手を求める。
「君の本音、しっかりと聞こえたよ。娘をよろしく頼む」
公開:21/12/21 20:17

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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