ロン毛の木
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ある夏の日、男は森の中を散歩していた。すると、ずっと先の方に一本の柳の木が見えた。こんな森の中に唐突に一本だけ柳があるなんて不思議だな、と思いながら近づいて見てみると、垂れ下がった葉だと思っていた部分は、黒々とした髪の毛のようなものだった。ぎょっとして木を見つめていると、どこからともなく老人が現れた。
「驚いたかね? これはワシが長年かけて開発したロン毛の木じゃ。毛の部分は人間の髪の毛と全く同じ成分でできておる」
聞くと、この老人は人毛を使ったウィッグを安価で生産できるよう、この木の研究開発に取り組み続けている博士とのことだ。
薄毛で悩んでいた男は、この木の毛を植毛させてくれないかと頼んだ。しかし、博士は言った。
「毛の部分は人毛と同じ成分じゃが、毛根が生きている間はあくまで木。植毛しても、秋には白髪になって、冬には毛が抜け落ちてしまうぞ」
「驚いたかね? これはワシが長年かけて開発したロン毛の木じゃ。毛の部分は人間の髪の毛と全く同じ成分でできておる」
聞くと、この老人は人毛を使ったウィッグを安価で生産できるよう、この木の研究開発に取り組み続けている博士とのことだ。
薄毛で悩んでいた男は、この木の毛を植毛させてくれないかと頼んだ。しかし、博士は言った。
「毛の部分は人毛と同じ成分じゃが、毛根が生きている間はあくまで木。植毛しても、秋には白髪になって、冬には毛が抜け落ちてしまうぞ」
公開:21/12/21 00:55
アマチュア執筆ユニット「産地直送タッセル万年筆」の田中エイドリアンです。主にnoteにショートショートを投稿しています。400字以内の作品が書けた際は、こちらにも投稿していきます。 http://note.com/freshpen
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