きこえる

散歩中、財布を拾った。中を確認してみると…おっ！結構入っているな。
俺の耳に悪魔のささやきが聞こえる。「盗んじまえよ。大丈夫。誰も見ていないしバレやしないさ」
俺はその声に舌打ちをすると「誰がお前の言いなりになるか！」と言い返した。
この悪魔、昔俺をいじめていた奴にそっくりだ。それを思うと腹が立って仕方がない。俺は悪魔の言葉を無視した。
そんな俺の耳に今度は天使のささやきが聞こえる。「その財布を交番に届けましょう。持ち主に返してあげましょう」
俺はその声にも舌打ちをすると「誰がお前の言いなりになるか！」と言い返した。
この天使、初恋の人そっくりだがその人は俺をいじめていた奴と結婚した。そんな女の言葉なんて誰が聞くか！
すると天使と悪魔、俺を非難してきたではないか。それが鬱陶しくて財布を川に投げ捨てた。

後日、偽札と偽装パスポートが入った財布が近所の川の中から見つかったとニュースが流れた。