四季ドーム

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雪の降り積もった並木道を抜けると、木造家屋の雑貨店が現れる。
店内に入ると、スノードームが所狭しと並んでいた。
立ち止まって眺めていると、サンタクロースに似た店長が話かけてきた。
「これは『四季ドーム』というんだ。
今は冬だからよくあるスノードームに見えるけれど、春には桜吹雪が舞い、夏には木漏れ日が降り注ぎ、秋には銀杏が落ちるんだ」
確かにガラスの球体の中を雪らしきものが舞っているが、これが春夏秋冬で移り変わるとは不思議な現象だ。
凝視すると、実際に吹雪いているような光景を目の当たりにした。そこには、オーストリアの首都ウィーンにあるシュテファン大聖堂が見える。
すると、球体の中からヴィヴァルディの『四季』にある冬のメロディーが流れてきた。ウィーンで没したヴィヴァルディだが、世界最古のスノードームメーカーもウィーンだったはずだ。
四季ドームもウィーン製で、故郷を懐かしんでいるのかもしれない。
その他
公開:21/12/19 07:08
並木道 雑貨店 スノードーム サンタクロース 四季

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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