きこえる

海で拾った貝殻に耳をそっと当てると、波の音が聞こえる…それは有名な話だ。
私は歴史博物館に展示されてある大きなほら貝にそっと耳を当てた。するとほら貝から聞こえて来るは多くの人の声。剣戟の音。嘶く馬にその蹄。それは合戦の音だった。
阿鼻叫喚の声にほら貝を耳から離そうとして…違和感を覚えた。何か、音が綺麗すぎる気がする…
「どうかされましたか？」
声をかけてくれた学芸員さんに私は疑問をぶつけてみる。
「ああ、その音ですか。ええ、その音は作られたものですよ」
学芸員さん言葉に肩を落とす私であったが、さらに告げられた言葉に目を丸くした。
「そのホラ貝。嘘を詰め込む事が出来るんです。当時は兵士の殆どが農民で武士は合戦上に滅多に現れませんでした。そこで兵士たちは八百長合戦をこの音に詰めたと言われているんですよ。ちなみにそれが八百長試合の語源になった言葉と言われています。音は作り物でも歴史は本物です」