味覚検査

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製薬会社の最終試験。そこで受験者を待っていたのは味覚検査だった。
「ウチの薬は子供でも飲みやすいをモットーに作っていてね。味覚は重要なんです」
社長の説明に納得した私は他の受験者同様に検査を受ける。
「では、出てくる薬を舐めて味の感想を素直に書いて下さい。なお、薬は体に無害なものなのでそこは安心して下さいね」
これは苦い。これは甘い。これは…甘酸っぱい?
10以上も舐めていると味覚がおかしくなりそうだ。
周りを見ると他の受験者も苦い顔をしている。
私は溜息を吐き、検査を放棄した。
これ以上やったら舌がおかしくなる。就職より私の体の方が大事だ。

数日後、試験の結果が帰って来た。
『採用』の文字に喜びと困惑が同時に訪れる。
「お薬をたくさん飲まされると嫌になるでしょう?私達は受験者の人間味を見ていたんです。貴方の正味な意見は私達が求めるものでした」
嫌味なく笑う社長に私は良い人間味を覚えた。
公開:21/12/18 20:41

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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