自販機

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「つまらねぇ人生だ」
昼に土手を散歩していると、茂みの中に自動販売機を見つけた。どうしてこんなところに。草をかき分けて近づいてみると、それは変な販売機だった。
ショーケースには缶がずらりと2段に並んでいる。缶の下には銘柄が書いてあるが、飲み物の名前ではない。
プロ野球選手、芸術家、社長。どの缶も1000円で、右端には赤い文字でお一人様、一日一缶までと注意書きがされていた。どうみても怪しいが、1000円ならば嘘でも痛くないだろう。話のネタにもなるし、と野球選手のボタンを押してみる。出てきた缶は,ごく普通のものだった。缶をぐるりと回して眺めているとこう書いてある。よく振ってからお開けください。ふと、昔の記憶が蘇った。プルタブを開けた瞬間吹き上げる、甘ったるい記憶が。一抹の不安を感じながらも、律儀に缶を振ってプルタブに指を掛け、開けた。その瞬間、不安は現実のものとなった。
ファンタジー
公開:21/12/18 20:37
更新:21/12/19 07:09

太郎犬( 日本 )

読書量も文章力も想像力もまだまだですが、ちょっとずつ投稿していきます。
コメントいただけると嬉しいです。
 

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