苔鳥

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夜明け前。
お坊さんたちが朝食の支度を始めている頃。

お寺の境内の中に小さな立派なお庭があります。

濃い緑色の苔。
朝露の雫が夜明けまじかの太陽の光を浴びて輝きを放っています。
苔の中から緑色の小さな鳥が姿を現しました。翼をひろげ長い尻尾は鳳凰のようにきらめいて見えます。

千年に一度、苔の中からその姿を現すといわれています。
苔鳥。

「ここここ。こけこっこー!」
鳴き声をあげました。
その声は夜明けを告げる静寂の空に響き渡りました。
「ここここ。こけこっこー。こけこけ」
苔鳥は卵を産みました。
卵の殻がモスグリーンの苔色の卵です。

「ほほお。これはこれは。けっこうけっこう。こけこっこう」
お坊さんはありがたくその卵を頂戴しました。


苔鳥はお寺の上空を旋回して、お寺の屋根に立ち、風を見ると、どこへともなく飛んでいきました。
その他
公開:21/12/15 11:25
更新:21/12/15 15:50
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前虎( https://mobile.twitter.com/mae10ra )

はじめまして。
前虎と申します。
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