きこえる

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『そこの君!儂を買ってくれないか!』
デパ地下を歩いているとふいにそんな声が聞こえた。
『ここだよここ。今、君の目の前にいるかまぼこだよ。ほら、美味しいから食べてみなって』
『ちょっと待て!そんな奴より俺を食え!揚げたてのからあげだぞ!最高だぞ!』
『あら?彼女と一緒ならアタシでしょ?スイーツを選ばないでどうするの?』
食品達の声にあたふたする僕。
「どうしたの?」
「あっ…ちょっとここの食品達に声をかけられて…」
口にして、しまった…と内心焦る。彼女に変な奴だって思われた…
「財布の中にいつもよりお金入れてると時々聞こえるよね。私も経験あるよ」
彼女の意外な告白に目を丸くする。
やっぱり彼女は僕の運命の人だ!
僕は彼女の手を取り、エレベーターに乗る。
着いた場所は宝石売り場。僕はすぐに耳を澄ませる。
『お兄さん、彼女にプロポーズするんだろ。こっちにおいで』
頼もしい宝石の声が聞こえた。
公開:21/12/14 20:41

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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