きこえる

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私がその人と出会ったのは天体観測をしていた夜の事だ。
美しい女性だった。しなやかな体で、力強く大地を踏みしめる。天に向け両手を突き、何かを引きずり下ろすかのように舞う。
見惚れる私の耳に入るは女性の動きがもたらす風切り音。そして、周りに集まってくる多くの足音。
私は周りに集まった者に目を向けられない。女性を、女性の舞を一瞬でも見逃すまいと凝視していた。

やがて舞が終わり、女性は息を吐く。私は拍手を送る。
周りに沢山の人がいたはずなのに、いつしかこの場には私と女性、二人きりだった。
首を傾げる私に女性は笑いかける。
「季節を集める舞に引き寄せられた人を見たのは初めてだわ」
女性は私の手を取ると再び踊り出す。
「この踊りはね、季節を呼び寄せるの。貴方も季節の足音を聞いたでしょ。一緒に踊りましょ」
私は女性と一晩中踊り明かした。
夜が明けると、四季を指揮する識者たる彼女は次の土地へと旅立った。
ファンタジー
公開:21/12/16 20:36

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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