漆黒の闇の蝉

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真っ暗な寝室のベッドに潜り込む。そして、瞼を閉じる。
呼吸を整え始める。
足先の冷たさを感じる。
上半身は掛け布団の温もりを感じる。吸う長さよりも吐く時間を多くするように
さらに、呼吸に磨きをかける。
風で木が軋む音、木の葉が揺れる音、窓に風が当たる音が、かすかだが聞こえる。
吸気で自分の肺が徐々に膨らみ、胸が上がるのが分かる。呼気では徐々に肺がしぼんでいくのが分かる。段々と自分の中心に漆黒の暗闇が出来てくる。そこに意識を集中するといつもの“アレ”が聞こえてきた。真夏の夕暮れに一匹だけ鳴く蝉の声。その蝉の声は非常に小さい。
研ぎ澄まされた静寂の中でしか聞こえない。
(ジィー、ジィーっと静かに周囲はお構いなしに、一人で鳴いている。)
もう、瞼は上がらない。
熟睡の世界へと導いてくれる。
ファンタジー
公開:21/12/13 20:02

ひまわり広場( 神奈川県川崎市 )

産婦人科専門医/指導医
@sanadakuma
tama-himawari3w.com
身体は日々の食事で出来ている。
妊婦さんにも食事の重要性について情報提供しています。
ダイエット中の方々にも食事・睡眠・運動の重要性について情報発信しています。
自身が「愛着障害」であることに気付き、もう一人の自分と上手に共生しています。
自分が、自分の『安全基地』になることが生きていくための拠り所なのかもしれない。
科学的な視点からの表現も交えて、ショートショートストーリーを作っています。

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