始まりは嘘つきの泥棒

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「誰?」少女の声に心で舌打ちした。
金目の物が無い落胆が気配に溶けたか。昔じゃあり得ないミスだ。
ナイフを持ち少女に近づく。やむを得ない。
「お爺さん、やっぱり帰ってきてくれたの?」少女は宙を見つめ涙した。
目が…だから耳が良いのか。
「爺さんに頼まれたんじゃ。コレを食べなさい」
魔が差した。違う家で盗んだ食料を置いて去った。
それから盗んだ物を知人を装い少女に届け続けた。
同情か自己満足か、理由は分からない。
1人で生きる者同士、共鳴したのかもしれない。

「黒さん?何で今日は赤なの?」
原色なら認識出来る彼女は普段着ていた服の色で私を呼んだ。
「これからは夜でも目立つこの色で会いにくるからね」
その日、1人の大泥棒が処刑された。
それから毎年、処刑された日の夜になると煙突に出入りする赤い服の男が目撃されるようになる。
彼が今まで盗んだ分を人々に配っているとの風の噂は彼女の耳にも届いた。
ファンタジー
公開:21/12/12 08:52

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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