イルミネーション

16
3

冬の風物詩、イルミネーションがあちこちできらめいている。
昼間は景観を損ねるだけの電球が、闇の中で輝く。
綺麗だ。華やかな一面、瞬く光に儚さをかんじるのは私だけだろうか。

運転席の彼が言った。
「もうすぐ着くよ。サプライズなんだ。声をかけるまでは目を瞑ってて」
目を瞑った上にアイマスクをつけ、車から降りた。
彼に手をひかれて、足元を確かめながら恐る恐る歩いた。
「アイマスクをとって目をあけてみて」
と言われ、そっと目をあけるとそこは一面イルミネーション。
強さも大きさも違う色とりどりの光が、宙に浮かんでいた。
「ほら、あの青い光」
彼が指さした先には、チカチカと語りかけるような青い光。
「ほら、あれが君が好きだった僕の兄だよ」

墓場イルミネーション。
私の手を握る彼の魂が暗闇の中で、ぼぉっと音をたてた。
その他
公開:21/12/14 11:12

風薫

第二の人生の趣味探しをしています。
老後、寝たきりになってもできる趣味探しをして、超ショートショートに出会いました(笑)(泣)
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容