花をつける影

1
2

日が暮れ始めると、彼らは活動を始める。
点火棒を片手に、街中に明かりをつけていくのだ。
僕には彼らが街中に花を咲かせているように見えて、きっと素敵なことに違いないと信じていた。
でも、お母さんは彼らに近づいてはいけないと言う。
仕事の邪魔になるから?と訊ねてもいつも笑って誤魔化された。

ある日、小さな子どもが彼らの足元に立っていた。
すぐに帰っていくと思ったのに様子が少しおかしくて、そのまま見ていると急に倒れてしまった。
周りの大人たちが騒ぎ立てる中、彼らは仕事を続けている。
あんなことが起きても仕事を続ける彼らをおかしいと責めない大人たちはどうかしている。
それに、あの子が倒れたとき、僕には彼らが点火棒で突いたように見えた。
でも、それを大人たちに言っても笑って誤魔化された。
彼らは良いんだ。
棒に火をとって花をつけるのが仕事だから。
影でしか出来ないことをしてくれているのだから。と。
ミステリー・推理
公開:21/12/09 11:39

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容