ステンドカラス

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教会へと続く坂道を歩いていた。
カラスの鳴き声がするので見上げると、黒く透けた鳥が電線に留まっていた。その鳥は、硝子のように日光を反射している。足が三本あり八咫烏のようであり、悠然と構える姿が鳳凰のようでもある。
牧師のような男性が近づいてきた。
「あの鳥がわかるんですね。信仰心が強くないと見られないという伝説の霊鳥で『ステンドカラス』と呼びます。
カラスは『烏』と書き、象形文字である『鳥』の目を表す横棒をなくし、全身が真っ黒で目の部分が見えないカラスを示しています。そのためステンドカラスを見る側も目で認知しづらいのです。
ステンドカラスは、私がいる教会に飾っているステンドガラスの模様なのですが、時たま抜け出して逃げるんです。気まぐれな風見鶏のようですが、魔除け効果があります」
牧師が聖書を開いて何か唱えると、ステンドカラスは教会のある方へ飛び立った。
「神のご加護があらんことをアーメン」
その他
公開:21/12/12 07:21
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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