最後のネジ

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「一体どうしたんだ?こんなに散らかして。」
 ガレージで作業しているとき、友人のKが訪ねてきた。
「久々にバイクに乗りたくなって。分解して磨いてたんだ。」
「どうして急に?」
「昨日、夢にこのバイクが出てきてね。海沿いの道をひたすら走ってたんだけど、起きたときの爽快感が忘れられなくて。朝からいじってたんだ。」
「そうか。…ところで、最近変わったことはないか?」
 Kが訝しげに聞いてくる。
「変わったこと?ないけど。」
「…それならいいが。実は、君の奥さんが最近君の様子が少しおかしいって心配してたんだ。」
「はは、あいつそんなこと言ってたのか。それより、さっきからこのネジが一本余ってるんだ。どこに使ってたかなあ。」
「…君の首の後ろの穴なんじゃないか?」
「おいおい、Kらしくない冗談だな。」
「…。」
ふと首の後ろを触ったとき、人差し指にあるはずのない凹みを感じた。
 Kは何も言わなかった。
ミステリー・推理
公開:21/12/05 23:59

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