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妻と散歩中、公園のベンチで一休み。
少し離れたところで四つ葉のクローバーを探しているであろう家族を眺めながら、持参した温かいお茶を飲む。
平和だな…
年老いた妻とこうして、今も一緒にいられる事に感謝する。退屈な日常も悪くない。

四つ葉のクローバーが見つからなかったのか、肩を落として帰って行く家族を見て私も席を立つ。
妻は周りをきょろきょろすると、そっと自身の足元へと手を伸ばす。
妻の靴の下から現れたのは1万円札。
もしかしてさっきの家族、それを探していたんじゃないか?
だがそれを証明する術はもうない。家族の姿はどこにも見当たらない。
妻め…こうなるのが分かっていたな…
そうだ。妻はこうした狡賢い強かな一面も持ち合わせていたんだ。
見た目でか弱い老婆と侮っていては痛い目を見てしまう。
妻は1万円と、ベンチの陰に隠れるように生えていた四つ葉のクローバーを手に取る。
そっちも見つけていたのか…
公開:21/12/05 20:32

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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