写真館の裏メニュー

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「じゃあ、ネガを見せてもらうよ」眼科医がするあの反射鏡をした店主が目を覗き込む。
何が始まったのかと戸惑う。「あの…祖父の写真と関係あるんですよね?」
「もちろん」と店主。
祖父の遺品整理で出てきた1枚の写真。
白黒写真でしか撮れないはずの被写体なのに色鮮やかな写真。それがこの写真館の封筒に入っておりここを尋ねたのだ。
「最近のは無いね…」ブツブツ呟きカメラを手に取ると私の額にレンズを向けシャッターを切った。
暗室と思しき部屋に消えると数分後1枚の写真を手に戻ってきた。
写真に絶句する。
「昔はね。普段の思い出を残す為に自分自身をカメラにしたもんだ」
昔転校した親友の澪ちゃんがいた。見送りに行ってその時の見た最後の姿だ。確かあの時
「目に焼き付けようとしたでしょ」店主はシャッターを押す動作をした。
私は意味を理解し改めて祖父の写真を見る。
はにかんで笑う楽しそうな祖母の若かりし姿があった。
SF
公開:21/12/07 11:44
更新:21/12/07 17:26

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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