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「じゃあ、またね」
君はそう言って僕に何度も手を振り、駅の方へと消えていった。
僕はそんな君の姿が見えなくなるまでずっと見続けていた。
「また、言えなかった。今日こそは告白するつもりだったのに」
僕は後悔した。でも、心のどこかで「また今度すればいいや」と楽観的にもなっていた。あの知らせを聞くまでは。

僕は自宅へ帰るため車のキーを差し込み、回した。
するとラジオから地震速報が流れた。
「震源地は仙台沖、200m、マグニチュードは8.5。津波の被害が予想されます。近隣の方は早急に避難して下さい」
「んっ、仙台って、あの子が住んでいる場所じゃないか」
僕は急いで携帯を取り出し、電話を掛けた。

それから二ヶ月後、君の遺体が海で発見された。
僕は急いで駆け付ける。
遺体置き場の君は生前の様な笑顔はなく、無表情だった。
だから僕は君に向かってこう言った。
「ゴメン、待ちあわせに遅刻しちゃった」
公開:21/12/02 13:55
更新:21/12/02 14:06

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