糸

ピロローン、糸屋からメールが来た。
あなたの赤い糸が絡まって、どうしてもほどくことができません。他の人にもご迷惑がかかっているので、切ってもいいですか
私は、迷いに迷ったが了承した。
ピロローン
切りましたが、そのままにしておくのも無責任なので他の糸と結んでおきました。

私は結び目のある赤い糸で啓介と結ばれた。
啓介は優しくまじめな性格。きっと最初から啓介と繋がっていたに違いない。
そのうちに優しさが頼りなさに思え、まじめさが退屈に思えてきた。

反省した私は、糸屋に連絡した。
「きっと結び目がほどけかけていると思うので、しっかり結び直してください」
「今、点検します。お待ちください」
「奥さん、手遅れです。糸はもう切られています」
「えっ！」
「旦那さんが切ったみたいですよ。ありゃりゃ、裕子さんという人と繋ぎ直しておられます」

郵便ポストを見ると離婚届が送られてきていた。