受け継ぐ

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 祖父も父も個人タクシーの運転手をしていた。
『尻子玉を抜かれたくなければ、タクシーに乗せろ』  
 今日は河童が乗ってきた。
「そんな事言わなくても乗せますよ」
『人間と馴れ合わない規則なのだ』
 河童がぼうっと生臭い息を吐いた。
「二日酔いですか?」
『話しかけるなと言うとるのに。でも美味い酒であった』
 地鎮祭の御神酒を地元の神々と飲んだらしい。
「無事、家が建つと良いですね」 
『辰雄の孫にはセンスがある。上手くいくだろうさ』
 いつの間にか河童の隣に狸和尚が乗っていた。
『お前さんも精進することだ。お前さんのじいさんは死ぬまで金ピカだったからな』
「はい」
『そうだ。子供の落とし物だと思うんだが』
「え、ちょっと待って」
 祖父も父も、神仏からの頼み事は断れないと苦笑いしていた。
「持ち主、もう大人だろうな」
 一世代前の戦隊ヒーローが後部座席でポーズを取っていた。
ファンタジー
公開:21/12/03 16:54
河童 狸和尚 久々に書きました

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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