たま入れ

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「今から恒例の『たま入れ』を行う」
と、天上界の長老が宣われた。
僕にとって初めての『たま入れ』だ。
「下界は見るもおぞましい状況である。犯罪、いじめ、中傷。心が荒んでいる。」

天上界では、下界の人間を作製していた。あとは『たま入れ』すなわち『魂入れ』を行うと完成する。
僕は、長老の言葉を聞き緊張してきた。
僕らの魂入れによって、今後下界がどんな世界になっていくかが決まってしまうのだ。
「やさしい魂をもった人間」「寛容な魂をもった人間」そんな『魂入れ』をしなければ、人間界は終わってしまうだろう。

見ると、向こうでは大きな鍋でお湯を沸かしていた。
僕は見様見真似で、とりあえず『魂』をお湯につけて『温かい魂』を作った。
「これで温かい魂をもった人間ができるといいけどね」
「冷めないことを祈るよ」
不安ながら、少しだけ安堵した。

「ところで、暖かい魂の適温は何℃?」
不安が募った。
その他
公開:21/11/30 23:45

風薫

第二の人生の趣味探しをしています。
老後、寝たきりになってもできる趣味探しをして、超ショートショートに出会いました(笑)(泣)
 

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