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「こちら、こちら、こちら、農協、農協、農協、です、です、です」
田舎の緊急アナウンスは非常に聞こえにくい。
声が山や建物に反響して重なって聞こえるからだ。
これは田舎にとっては大問題である。
ダムの放水や地震の速報が住民に伝わらず、大勢の被害者が出てしまう。
そこで考えられたのがノイズキャンセルマシンである。
あえて特定の周波数の騒音をマシンから出すことで不要な音をマスキングしてしまおうと言う機能だ。これにより緊急のアナウンスは格段に聞こえ易くなった。
でも、すぐに別の問題が発生した。
このマシンの騒音が五月蠅くておちおち眠れないと言うものだ。
そこで市役所は頭を捻って考えた。
「そうだ、大きな深い穴を掘ってその中にこのマシンを入れてしまえ」
市役所は名案だと思っていた。
だが、穴のせいで地下水が消え、作物は枯れ、飲み水もなくなった。
結局、市役所は住民との間に深い溝を作ってしまったのだ。
公開:21/11/30 22:17

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