鍋の話

家で仕事をしていてどうにも考えがまとまらない時、私は思考鍋を取り出す。
頭の中でゴチャゴチャしている思考を全て鍋に入れ、じっくりコトコト煮詰めていく。
『煮詰まる』とは本来、考えや議論や話し合いが十分に行われて結論を出せる段階になる事を意味する言葉ある。
つまり、こうして煮詰める事で私の考えは結論を出せる状況へと変化する。
とはいえ最初の内は慣れておらず、何度も失敗した。
火の通りが悪かったのか、それとも若さゆえの情熱か、芯の残った考えばかりが残り益々悩まされた。
ならばもっと火を通してやろうと時間をかけ、結果全てが真っ黒に焦げ付いた。
くすぶった思考はどうにもならない。風呂に入り、頭をさっぱりさせると早めに寝た。
そうした失敗を何度も重ね、私は思考鍋の料理上手になった。
そろそろかな…と、蓋を開ける。むわっ！と蒸気が立ち昇る。
鍋の中を見ると南瓜の様に黄金に輝く考えが仕上がっていた。