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チリ~ン
風鈴の音が聞こえた。
無色透明で見えないはずの風が確かにそこを通過した。
どこか涼し気で、どこか寂しい音色だった。
きっと私が失恋したからそう聞こえるのかもしれない。
あんなに暑かった夏はもう終わった。
それと同時に私の恋も。
きっと彼もまた私を通過しただけの風だった。
そんな気がする。
それなのにまた逢いたい、戻ってきてと考えてしまう。
本当に馬鹿な女ね。
今もあの人の声が耳元に聞こえてくる。
「好きだよ。愛してる」
お互い、何度その言葉を言いあった事だろう。
それなのに彼に別の女性がいる事を知ってからその愛の言葉は空虚な嘘に聞こえた。
「別れましょ」
その言葉は私の方から切り出した。
彼は「もう一度やり直そう」と言っていたが、私の心に入ったひびは修復不可能だった。
先日、風の便りで彼が結婚した事を知った。相手は私の知らない女性だった。
チリ~ン
また風鈴の音が聞こえた。
公開:21/11/30 12:16

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