名前、譲ります

俺は人生に絶望している。リストラにあい、婚約破棄されたのだ。
重たい足でいつもの通りを歩く。チラと横目に見た掲示板には、物騒な顔をした男の写真と共に『凶悪殺人犯 ○○ 28歳』と昭和のような張り紙がされていた。


"名前、譲ります。"

ある日、そう書かれた看板がぶら下がっている古く小さな店を見つけた。俺は迷わず店に入り、年老いた店主におずおずと尋ねる。

「名前が貰えるって本当か？」
「ああ、本当だとも。その代わり、今の名前に戻る事は出来ないよ」

僕は名前コレクターなんだよ、と言いながら俺に合う名前を探してくれた。
これで俺の人生も変わるんだ、希望に満ち溢れた俺は新しい名前と共に新たな1歩を踏み出した…はずだった。


「いたぞ！殺人犯、逮捕！」

店から出た俺を見るなり確保する警察官。殺人なんてした覚えはない。
いや、してはいないが覚えがある。掲示板に書かれていたあの名前は……