北国銘菓

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むかし、山あいのとある村に、茂吉という男がいた。甘いものが大好きで、とくに餡子には目がなかった。小豆は貴重品で、お正月ぐらいしか食べられないものだったが、茂吉は山越え谷越え、どうにかこうにか小豆を手に入れては、それを炊いて餡子を作っていた。餡子を使って羊羹や善哉を作ったり餅と一緒に食べたりと、初めは自分で食べる分だけ作っていたが、じきに茂吉の餡子が美味しいと評判になっていった。「おらの餡子で、こんなにみんなが喜ぶんだなぁ。」嬉しくなった茂吉は、全財産を投じて、家を菓子工房にした。工房からは、美しい山がよく見えた。

「ほれ、優那ちゃんの好きな、茂吉さんの最中やよ。」
ばあちゃんは、ポケットにでもしまっていたのか、ひょいとお菓子を取り出して優那の手の平に置いた。
北国銘菓 -善哉山-
包みを開けると、山の形をした最中が出てきた。美しい二等辺三角形の最中を割ると、餡子がつやつやと輝いている。
公開:21/12/01 00:46
更新:21/12/01 23:46

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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