エリート寿司

2
2

「大将、シャリが柔らかいよ。酢の配分大丈夫?」
「へい、申し訳ありません。」
 俺は自他共に認める寿司通だ。寿司のことで俺の右に出る奴はいないと断言できる。

「大将、もっと速く握れない?体温がネタに移ってるよ。」
「へい、重ねて申し訳ありません。…ところでお客さん、かなり寿司に詳しいみたいですね。」
「そりゃそうさ。俺ほど寿司を食べてる奴なんていないだろうね。」
「そんなお客さんに、とっておきのネタ、握りましょうか?…あの『キンゴ』です。」
「キンゴ?」
「魚へんに金と書いてキンゴ。幻と言われている、寿司界でもエリート中のエリートのネタです。」
「ああ!キンゴか!この店にもあるのか!大好物だ、どれ、握ってくれ!」

「へい、お待ち!」
 俺の目の前に差し出されたのは真っ白な『シャリ』だった。
「大将、これは?」
「キンゴなんて魚、存在しませんよ。」
…こりゃ、大将に一本とられたか。
その他
公開:21/11/29 00:01

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容