聞こえる

私が街を歩いているとこんな音が聞こえて来た。
「ふ～、ふ～」
ベンチで夫婦らしき男性と女性が仲良く焼き芋を食べていた。
「ああ、もうそんな時期か」
私は急に焼き芋が食べたくなった。
「石焼芋、お芋」
向こうから販売車がやって来た。
「すみません。焼き芋下さい」
「お断りします」
「なぜですか？」
「あなたが独身だからです」
「何故、独身だと駄目なのですか？」
「この店の芋は皆、やきもちやきなんですよ。だから、酸いも甘いも分かる者しか買えません」
「そうなんですか」
「ええ、独身者が綺麗な芋だけをお持ち帰りすると他の芋が急に冷めてしまうのです。まあ、中には嫉妬の炎で身を焦がして灰になってしまうのもいますが。だから、買うのであれば全部まとめて買って頂く事になります」
「それはちょっと」
「いや～、手のかかる子供達です。私も手を焼いています。まあ、私は皮手袋をしているので火傷はしないんですけど」