ウイスキーラベルのおじさん
9
4
「何かお悩みかい?」
彼がそう喋りだした時は驚いたものだ。
ウイスキーのラベルに印刷されている、立派な髭をたくわえた彼が、だ。
酔っていた僕は人間関係の悩みを話すと、
「一杯だけこのウイスキーを飲んでくれたら、解決策を授けよう」
僕は小さなグラスに注ぎ、ストレートで呷った。
すると彼は「折り畳み傘を買うといい」とへんてこなことを言った。
しかし実際に傘を買ったことで、問題が解決の方向へ進んだのは事実だった。
僕は次々と相談を持ちかけ、彼は様々な解決策を授けてくれた。
が、ウイスキーが残り少なくなったある日、彼は唐突に打ち明けた。
中のウイスキーがなくなると、二度と喋ることができなくなると。
「じゃあこれ以上相談はしないよ」
「いや」と彼はきっぱりと言った。「悩みを解決するのが俺の存在意義なんだ。頼むよ」
「分かった。またいつか、ね」
君がいなくなってほしくない、とは言えなかった。
彼がそう喋りだした時は驚いたものだ。
ウイスキーのラベルに印刷されている、立派な髭をたくわえた彼が、だ。
酔っていた僕は人間関係の悩みを話すと、
「一杯だけこのウイスキーを飲んでくれたら、解決策を授けよう」
僕は小さなグラスに注ぎ、ストレートで呷った。
すると彼は「折り畳み傘を買うといい」とへんてこなことを言った。
しかし実際に傘を買ったことで、問題が解決の方向へ進んだのは事実だった。
僕は次々と相談を持ちかけ、彼は様々な解決策を授けてくれた。
が、ウイスキーが残り少なくなったある日、彼は唐突に打ち明けた。
中のウイスキーがなくなると、二度と喋ることができなくなると。
「じゃあこれ以上相談はしないよ」
「いや」と彼はきっぱりと言った。「悩みを解決するのが俺の存在意義なんだ。頼むよ」
「分かった。またいつか、ね」
君がいなくなってほしくない、とは言えなかった。
公開:21/11/28 21:29
ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。
ログインするとコメントを投稿できます