鍋の話

台所は男が入るものじゃない、と言われて妻は育ったそうだ。
それ故に妻は物を隠す時、必ず台所に隠す。そして、子供達の手の届かない場所に大事なものを隠す。そうだな…あの鍋の中なんて怪しい。
パチンコする金欲しさにこっそり台所に忍び込み、妻のへそくりを漁る。
ビンゴだ！鍋を軽く振ってみると何か音がする。ワクワクしながら蓋を開けて見ると中に入っていたのは猫の置物だった。
…何だこれ？眠っている猫…か？
手にとってそれをよく見る。これ、面白いな。角度によって猫が起きているように見えるのか。
って、何でこいつ俺をじっと見ているんだ？
『ギニャアアアアァァァァァッ！』
突如猫が大声で鳴いた。
その声に驚き、食器棚に背中をぶつけると上に置かれていた鍋が俺の頭の上に落ちてきた。
気絶する俺を見届けると猫は再び眠りへとついた。

「こうなると思って、眠り猫鍋トラップを仕掛けていたのよ」と帰宅した妻に怒られた。