コンパクトレンズ

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ある眼鏡メーカーの研究員がコンタクトレンズに似たコンパクトレンズを試作した。
コンパクトレンズを目につけると、見るものすべてがコンパクト、つまり小さくまとまる。
研究員がコンパクトレンズをつけて住宅街を眺めると、圧縮されて小さくまとまった。人も物もすべてがミニチュアのようになり、これで狭い土地でも十分快適に生活できる。
研究員は、誰にも気づかれないよう、コンパクトレンズをつけて全国各地を手当たり次第に訪れると、いつしか小人の国になった。
そして、いま大きいのは研究員だけだ。まるでガリバーのような巨人になって研究員は困り果てていた。
ふと研究員の目の前にあった全身を映す鏡で自分の姿を眺めると、研究員は見る見るうちに小さくなった。
すでに小人になったひとたちと同じサイズになった研究員は、見たものがこれ以上、小さくならないようにコンパクトレンズを外した。
研究員は、小人の国で平穏に暮らしている。
SF
公開:21/11/28 07:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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