トラベルミステリ

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完璧な時刻表トリックが完成した。
いままでありとあらゆるトリックが考案された。ホームを利用したり、電車が交差する瞬間を狙ったり、一見不可能と思われる移動が時刻表の盲点で可能になったりと、どこから発想が生まれるのかと感心するほどだ。
しかし、今回のトリックはどれにも当てはまらない。完全オリジナルだ。
作家は自信作を手に出版社を回った。
ところが、どの編集者も首を横に振った。
画期的すぎるトリックが理解できないのかと思い、ダイヤグラムを付けて説明したのに、みんなが眉をひそめるだけだ。
ある女性担当者は作家を小ばかにしたような表情で見下してきた。
「なぜ、このトリックが成り立つと思うのですか?」
夢破れたオレは、精鍛込めて書き続けた作品を川に流すことにした。
幻の大作は、ガンジス川に沈んで消えた
ミステリー・推理
公開:21/11/27 10:05

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