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私の父は猟が好きで、獣を捌くのが得意だった。
父は毎週末、山や海へ出かけては様々な獲物を手に帰って来る。
母はそんな父が好きではなかったようだ。魚ならまだしも、雉や兎等は見たくもないと目を背けた。
猪や鹿は臭味もあるし血塗れになるからと物凄く嫌がった。
私は血の匂いが好きだった。だって、血の匂いがすると御馳走が食べられる。
私だって最初は兎を可哀想だって思った。でも柔らかくてジューシーなその味に思わず私が飛び跳ねてしまった。
それに、だ。ただ殺してしまうのはもっと可哀想だ。こうやって食べる事が供養にもなる。
いつしか私は血の匂いを嗅ぐと涎が出るようになってしまった。血の匂いは父の作ってくれる美味しい鍋を彷彿とさせる。
だから今、私は目の前で大怪我をしている娘を見て、涎が止まらない。
ああ…可哀想に…でも、同様に食べちゃいたいくらい可愛い…
赤ずきんの狼も、きっとこんな気持ちだったんだろう…
ホラー
公開:21/11/26 20:33

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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