復活、百円札

硬貨になってから僕らの値打ちはなくなった。
小銭入れにぎゅうぎゅうに入れられ、冷遇されてきた。
それも今日で終わり。お正月前に復活だ。
48年ぶりに紙幣に返り咲いた少し赤みがかった百円札たちはインクの匂いを漂わせながら嬉しそうに話していた。
「百円君、がっかりしなきゃいいのだが」
と、千円札が呟いた。

お正月、新品の百円札５枚は満面の笑みでポチ袋に納まった。
「袋を開けた子供たちの歓声を久しぶりに聞くことができる」
と、心待ちにしていた。
「えっ、これ何？　紙の百円ってなんだよ。人生ゲームのお金？」
指が切れそうなピンピンのお札は無造作に袋に戻されて無残に折れ曲がった。
「今のご時世、僕たちだってがっかりされるんだよ。だから百円札くん、気を落とさないで」
と、千円札が慰めた

硬貨のほうがよかったよ。
百円硬貨は自動販売機前で重宝されるもの。
なくてはならない百円硬貨に戻りたい。