通販世界

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ポニーテールを左右に振ると馬になれる瞬間があるという。激しいめまい。吐き気の向こうに生まれ変わりはあるらしい。このまま馬になれば言葉は失ってしまうのだろうか。私は通販会社のオペレーター。禅の世界に生きている。叶うなら競走馬や農耕馬より野生の馬になりたいと思う。大海をのぞむ岬の突端でのんびり草を食んでみたい。この栗毛のポニーテールがそのまま馬のしっぽになるとしたら私の頭はおしりだろう。
ここはザンビアにあるコールセンター。馬になれた夕暮れ。道草を食む自分の息が生臭い。後頭部からは何やらあたたかいものがもりもりと出てきてぼとりぼとりと地球を鳴らす。襲いかかるライオンが駆けだす前脚を私の目の前で仕留め、動力を失いおしりである私はなす術もなく倒される。おなかまでの縦縞が血に染まり咀嚼するライオンの目に横縞の私が映る。そう。シマウマの脚は地平線のように横縞だ。
お客さま。私を食べる音が聞こえますか。
公開:21/11/24 11:46

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