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私は目の前の彼に問いかけた。
「念のため聞きたいのだが、君は本物かね」
「私を疑うのですか。私は本物の渋沢栄一です」
「その証拠は?」
「私の背中には東京駅のタトゥーが入っています。それにほら、私の左上には10000円と書かれているだろ。それが何よりの証拠だ」
「いやいや、それくらいなら海外の技術者によって複製が可能だ。証拠にはならないよ」
「では、私の左下にはホログラムがあります。これは簡単に複製できません。また、一万円のゼロの中にさらに細かい文字で100000と刻まれています。海外の印刷技術では再現不可能です」
「なるほど、事情は分かった」
「分かって頂けましたか」
「ひとつだけ腑に落ちないことがある」
「なんでしょう」
「何故、私のもとに来たのかね。おかしいじゃないか。君が世間に出回るのは数ヶ月後のはずだ。それなのに君はここにいる。君は一体、何処の誰かね。正体を明かしたまえ」
公開:21/11/24 09:08

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