賛成雨

「起きて！すごい雨だよ」瑠美は勢いよくカーテンを開けた。
「何？それ晴れてる時のヤツ」朝から雨だと気分も乗らない。
「天気予報で『あいにくの雨模様』って表現しないの。何でか分かる？」さぁと頭を掻く。
「農家の人にとっちゃ『恵みの雨』だからよ。それに」
無理やり眼鏡を掛けられる。
「圭介にとって超恵みの雨なんだから」
運動嫌いの瑠美がジャージ姿だ。
「え、まさか…！？」
「そう、３０年ぶりの賛成雨だって。つまり私達は人生初！」
「早く言えよ」慌てて飛び起きた。
例えば災害が自然の厳しさの最たるものなら
賛成雨は最大の自然の優しさと言える。
その雨を全身に浴びれば全ての後ろ向きな気持ちを肯定感が包み込む。

「圭介！傘要らない、傘要らない！」
条件反射で掴んだ傘を戻し、二人は土砂降りの街へ飛び出した。
既に沢山の人が雨を受け止めていた。
圭介は心から迷いや不安が溶け出していく感触を噛みしめた。