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町内会で芋煮会を行うと聞き、妻も自慢の大鍋を持って参加した。
皆、妻の姿を見て唖然とする。
妻は汚れが目立たない様にと真っ黒なローブを着込み、紫外線対策につばの広い三角帽を被る。…まるで魔女だ。
さらに鍋は御伽噺で出てくるような黒い壺のようなもの。…魔女のそのものだ。
皆が遠巻きに眺める中、勇気ある子供達は器と箸を手にやってくる。
だが一口食べるや「苦い~」だの「不味い~」だの文句を垂れる。
妻は子供達の器に蜂蜜を一滴垂らす。途端「甘い~」だの「美味しい~」だの喜びの声が上がった。
さすがに子供達の舌に薬膳鍋は合わんだろう。
この苦さを良しとするは老人会の方々。むしろこの渋みがいいと大好評である。
皆に不自然と言われても自身の自然体を突き通す妻。そんな妻だからこそ、皆が自然と笑顔になる。
ドルイドの血を引く彼女の大鍋の中、芋煮はほろほろと崩れていく。
だがそれが食べやすいと大好評である。
公開:21/11/21 20:18

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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