天然の美

近頃は技術の発達で、まるで本物の様な光景を作り出すことができる。
たとえばレトロなお店と思えば、それらしく作った新築の建物だったり。
美しい砂浜と思えば、埋立てで出来た人工公園だったり。

さて、南洋のある所に、太古からの自然を大切にして、人々が暮らす島があった。美しい天然の風景を目的に、多くの旅行者が訪れた。
ところがある時、妙な噂が立った。「これは本当に天然の景色なんですか？」「粘土製の造形物じゃないの」という声が出てきたのだ。

島の人は、祭礼者（シャーマン）を通して、自然をつかさどる精霊や妖精に頼んだ。どうにかして、人工ではなく、天然の美である事を、旅行者に伝えてほしいと願った。

すると、人と自然の精霊が仲良く暮らす島のことである。
早速、次の日にその答えが現れた。
美しい島の風景の岩肌や、大木の根元などに、作者を示す「Nature.」という、サインが浮き出してきたのだった。