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夜が更け、私は布団に入っていた。
私がウトウトしかけた頃、障子の向こうから鈴の音が聞こえてきた。
チリ~ン、チリ~ン
こんな夜更けに誰だろう。私は眠い目を擦りながら障子を開ける。
すると井戸の方に白い服を着た女性が立っていた。
「返して下さい。私の宝物、返して下さい」
彼女は何度もその言葉を繰り返す。
だが、私には何のことか分からない。
「何を返せばいいのかね。教えてくれ」
私は彼女にそう尋ねた。
すると彼女は
「私の大切な子供。その女が無理やり私から奪った」
と答えた。私は少し考え、もしかしてと妻の寝顔を見た。
この女は
「責任を取って下さい。この子はあなたの子です」
と突然、私の家に押し掛け、家の前で喚き散らしたのだ。
両親は世間体を気にして私とその女を無理やり結婚させた。
私にとっては屈辱の出来事だ。そして今でも思い出す。
結婚の約束をしていたあの女性の声が。
「私、待っているから」
公開:21/11/23 11:45

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