0
1

心の中からかくれんぼの掛け声が聞こえてくる。

「もう、いいかい?」
「まーだだよ」
「もう、俺は生きるのが辛いんだ。なあ、もう、死んでも良いだろ?」
「まーだだよ」
「友人も恋人も両親も誰も信じられない。皆、俺を裏切った。もうこんな世界に未練はないんだ。なあ、いいだろ?」
「まーだだよ」
「まだ俺は生き恥を晒し続けなければならないのか。俺はこの世から消えたいんだ。誰の目からも見えない所へ」
「まーだだよ」
「辛いよ。苦しいよ。今も奴等の醜悪な笑い声が聞こえてきて頭から離れないんだ。なあ、だから死んでもいいだろ?」
「まーだだよ」
「場所は富士の樹海が良いな。あそこはいい。広大で誰も人が近寄らない。隠れるのには最適だ。だからいいだろ?誰にも迷惑はかけないからさ」
「まーだだよ」
「いい加減にしてくれ。俺をいつまで待たせるつもりだ。俺は疲れたよ。もういいよ。君とはやっていられない。俺、帰る」
公開:21/11/22 23:49

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容