ごえんがあるよ

幼い頃、五円玉の穴の向こうを見つめていたらその先に見知らぬ風景と見知らぬ女性が見えた。
驚く僕に女性はにっこり微笑む。
「こんにちは。坊や一人？お姉さんとお話しない？」
いいよ、と言ったらお姉さんは嬉しそうに話してくれた。最初は楽しかったけど、途中からヨソジとか、セイヨクとか、分からない話をしてきた。僕はお姉さんが怖くなってきた。
「坊や、私達は結ばれる運命なの！大きくなったら私と結婚して！お願い！もう坊やしか頼れる人がいないの！」
真っ赤な目で穴を覗き込んでくるお姉さん。耐えきれなくなって、僕は５円玉を投げ捨てた。
その日以来、僕は５円玉恐怖症になった…
皆にバカにされるけど、あの日見たものは絶対に夢じゃない！

そんな僕も大人になり、徐々に５円玉に対する恐怖も薄れてきた。だけど…
「みぃつけたぁ…」
今日、目玉に５円玉を貼り付けた不気味な老婆に声をかけられた瞬間、あの日の恐怖が蘇った。