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とある森の、奥の奥にある、とある工房。
小さな門の横には、「兎製月」という、古びた木の看板がかかっております。
窓から、ちらちらと揺れる影には、長い耳がふたつ。
蒸気のもれる音や、いくつもの足音に混じって、工房員たちの働く様子が聞こえます。
閏月米を乾燥させ、ごりごり擦って、熱いお湯と合わせて、大切に大切にこねる。
そして、四、五日の間乾燥させて焼き、醤油を塗り、「兎製月」の兎の印の焼印を薄くぺったんと押すのです。
今日は皆既月食の予定でした。
しかし、どこにでも、少々間抜けな工房員はいるものです。
月の端に醤油の塗り残しがあったのですが、それに気が付かず、ぺったんと焼印を押して、空に上げてしまいました。
なので今日は、部分月食。
しかし、地上の人々がありがたがるものですから、あの間抜けな工房員は済ました顔をして、今日も月をつくっているようです。
ファンタジー
公開:21/11/19 18:38
更新:21/11/19 19:08

かさ( 愛媛 )

来年以降のいきかたが決まりましたヽ(=´▽`=)ノ

コメント読んだりお返事したりするのはとても好きなので、気楽にコメントいただけると嬉しいです。

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