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月の音色が聞こえた。
それは淡く透き通っていて、触れると溶ける綿菓子のようだった。
どこからこの音色は聞こえるのだろう。
私はその音色の在処が気になって眠れなくなった。
気付けば私は家を裸足で飛び出していた。
どこなの?どこから聞こえるの?
私は辺りを探した。
路地裏、ゴミ箱の中、駅のプラットホーム
そんな所にあるはずがないのに。
どこなの?どこから聞こえてくるの?
そんな私の様子を見かねた上品な紳士がこう言った。
「ずっと下ばかり見ていないで上を見上げてごらん」と。
私が見上げるとそこには星月夜が広がっていた。
北極星を中心に漆黒のレコードが回り、その所々に青、赤、緑の星々が散りばめられていた。
「あれは何?」
「ああ、月の銀盤だよ。そしてあの星々は亡き銀幕のスター達。あの音色を聞いていると私は若かりし頃の自分を思い出すよ。私にとっての青春だ。まあ、老人の戯言と思って聞き流しておくれ」
公開:21/11/17 10:29

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