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「私の声、聞こえますか?」
「はい、聞こえます。そちらはどうですか?」
「ばっちり、聞こえます」
それが宇宙から地球に掛けた初めての電話だった。
「それならあなた、この音は聞こえる?」
「えっ、全然聞こえないよ」
「もう、ちゃんと聞いて。私のお腹をこの子が蹴っている音よ」
「ああ、なるほど。さっきの音はそう言う事だったのか。ははは。ところでさっきから気になっていたのだが、君の隣に誰かいるのかい?」
「えっ、誰もいないけど」
「本当に?男性の声が聞こえるのだけれど」
「きっとテレビの音じゃないかしら」
「まさかとは思うが僕に黙って浮気をしている訳ではないよな」
「そ、そんな訳ないじゃない。だって私のお腹の中にはあなたの赤ちゃんがいるのよ。そんな事はしないわ」
「なあ、怒らないから本当の事を聞かせてくれ。遠距離恋愛に疲れて他の男性と関係を持ったんだろ」
「違うって言っているのが聞こえないの」
公開:21/11/16 18:42

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