雪消の道

0
1

雪消の道を私は歩く。まだ寒さが残っている。でも私には、歩かなければならない理由がある。

それは――
いなくなった兄を探す為――。

雪の降る夜の事だった。兄は突然、家を飛び出して次の日の朝になっても帰ってこなかった。

「兄さん……。一体どこにいるの?」

雪消の道を歩く。時々、手先が冷たくなるので、ハァと息をかけて手を温める。これ以上先に進んでも兄はいないかもしれない。でも進まなければならない。一応、確かめたい事があるからだ。

もしも兄がこの道の先に行ったというのならば、目的地は私達の両親のお墓。そこに兄が来たという痕跡があるかもしれない。

両親のお墓に着いた。墓の前で立っていたのは、紛れもなく兄だった。

「兄さん。やっぱりここにいたんだ。何してるの?」
「母さん達、寒いかなって思ってさ。暖かい缶コーヒーお供えしてたんだ」
「兄さん。帰ろう」
「ああ、お前の分の飲み物も必要だな」
公開:21/11/18 10:48

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
Twitterは@book_Akiyu

・SSG投稿作品1500作品突破

・作詞を担当
https://youtu.be/OtczLkK6-8c

・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

https://youtu.be/frouU2nCPYI

・魔法のiらんど大賞2021小説大賞。大人恋愛部門「彼女の作り方」が予選通過

〇サウンドノベルゲーム版作品(無料プレイ可)

ブラウン・シュガー
https://novelchan.novelsphere.jp/38739/

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容