マスク美人

A子はある企業から発売されたマスクをつけていた。その素材は肌に密着し、相手のイメージ通りに写る。マスク美人、マスクイケメンの顔になれるというものだ。
「何もつけていないみたい。これでB君と付き合えるかも」
A子はずっとそのマスクをつけていた。
通気性もよく、肌と一体化しているようだった。注意書きには長時間つけると、肌と融合し皮膚が浸食されるとあったが、家では外せばいいだけだ。
「A子ちゃん、すごく綺麗だよ。僕の理想の人だ」
「うれしいわ」
「今度、うちに来ないか」
A子は戸惑った。このマスクの裏の顔がバレたら幻滅されるかもそれない。
A子はマスクを買い漁り、鏡を見ながら本当の私はこれだと言い聞かせた。

気がつくとA子は医者と話していた。
この理想の顔そのままに整形して欲しいと頼んだ。
「A子さん、あなた全身にこのマスクの素材を貼りましたね。今はもう、あなたの皮膚はどこにありませんよ」